雨の日も晴れの日も、僕ら。

日々のあれこれを綴りながら、楽しく生きたい。 

『 青。』

    『 青。』

 

今日も素晴らしく空が青いよって先生が言うから、右目だけちょっとあげて空を見た。空の青を見る前に太陽がまぶしすぎて、すぐに自分の黒い靴のつま先に目を戻したけど、目の前が白くなってしまい、よく見えなくなった。

いつもの交差点は交通量が少ないのに信号機がついているから、車も自転車も通っていないのに、僕と先生だけが青に変わるのをきちんと待っている。天気の良い日はまぶしくて信号の色が見えないから、青になっても、先生が行くよって言わない日がきたら、僕はどうやって渡るんだろう。 

 

「行くよ。」

僕はもう小さい子じゃないけど、道路を渡るときは先生が僕の左の手首を、触れるか触れないかぐらいの強さでつまんで誘導してくる。僕は人に触られるのが好きじゃないのに、なんでか知らないけど先生の手は嫌いじゃない。嫌いじゃないのにときどき、すごく邪魔に感じて、僕が叩いたりひっかいたりするから、先生の右手には、だいたいいつも絆創膏が貼られていて(今日は手の甲と親指の付け根あたり)、それがざらざらと僕の指に当たる感触はそんなに好きじゃない。

 

学校の近くのパン屋の角で、決まって胸のあたりに嫌な気持ちがわいてきて、僕は回れ右をするか、パン屋の自動ドアのなかに吸い込まれるか、どっちがいいかってよく考える。パン屋はいい匂いがするから好きだけど、僕の好きなやつは、この時間、まだ焼き上がっていない。回れ右も自動ドアもなしで、学校に向かって歩いた。先生がわざと速足で歩いて、僕がついてくるかを横目で確認しながら右手を伸ばしてきた。僕はその手をつなぎたいわけじゃないのに、そうされると先生と同じ速さで学校の門をくぐってしまう。今日も先生の勝ちでいいよ。学校は好きじゃないけど、先生と一緒なら大丈夫ってもうずいぶん前からわかっている。

 

ショウコウグチはひんやりして暗いから嫌。だけど靴を脱いで、違う靴に履き替えるのが得意じゃないから、早く通り過ぎたいのにいつももたもたしてしまう。先生は靴を脱いだらかかとのない靴を履くから、あっという間に履き終わって、僕がもたもたしているのを待っていてくれる。ハハオヤのように文句を言わないし、勝手にかかとに指を突っ込んで履かせようとしてこないのはいいけど、それより僕もかかとのない靴がほしい。あれなら一瞬でショウコウグチから離れられるのに。

 

シンコウシャの2階の奥の廊下は青っぽく見える。教室の壁もカーテンも青いから。窓際に並べた水槽のキラキラが壁にも天井にも反射して、海のなかみたいだろって先生が言うけど、海のなかには行ったことがないからよくわからない。でも、これが海なら海は結構好き。

 

違う先生が国語の授業を始めたとたん、耳がふさがったみたいによく聴こえなくなって、天井をトビウオみたいなのがぴょんぴょん飛び跳ねるのを目で追っているうちに気分が悪くなって机に伏せた。海のなかは青くて静かだから、眠るのにはちょうどいい。だけどいい感じにもぐったと思ったらチャイムが鳴って、上からも横からもイスを引きずる音がしてくる。あの音は学校のなかで3番目に嫌い。あれを聞くとイライラする。イスってなんであんなにうるさいんだろう。

 

僕の頭のなかは言葉が溢れているのに、僕の口は、うんとかいやとか短い言葉しか出ないようにできている。なんで口はうまく動かないんだろう。先生ともっと話したいのに、うまく伝わらないことがとても悲しい。

 

青はきれいな色だけど、悲しいに似ている。僕の気持ちに似ている。先生は優しくてときどき悲しいから、先生も青に似ている。次は水族館に行きたい。青がきれいで、楽しい絵を描いたら、先生の悲しいを少し消せるかもしれない。 色鉛筆を持っていこう。でも、またスケッチブックから絵が消えて、僕の青が濃くならないかってことだけが、ちょっと心配。

 

 

 

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